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罪を喰らう者 - かしわーど・柏ミニ文学賞

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 罪を喰らう者(RegNo.0044)


タイトル:「罪を喰らう者」
ジャンル:小説

 世界は、考えても理解できないことで満ちている。むしろその多くは、理解の範疇に無いということすらも気づかない。それらは、ごく自然に僕らの日常生活を囲み、普通という概念に浸透し、内側から常識を貪り食う。決して、表の世界にはその存在を語らず、しかし、確実にそこに居る。
 
 そのことに僕が気がついたのは、今から2年前、ちょうど高校受験を目の前に控えた、中学3年の夏だった。
 
 受験生というのは、いろいろと忙しいものである。毎日のように塾に通い、課題をこなす。暑い中を、十五分かけて目的地まで歩くのだ。軽い拷問並みの辛さである。勿論、ただ勉強ばかりをしているのではなく、志望校も選択しなくてはならない。日々、頭と身体を酷使し、心身共に疲弊しきる学年、それが受験生である。
 
 そいつに出会ったのは、八月も中旬を過ぎ、残暑が厳しくなってくるような時期である。といっても、その年は冷夏のせいで、そこまで暑さは感じなかった。そのために、そこが野外であると意識していなったのだろうか。ふと気づくと、僕は雑踏のど真ん中に立っていた。ちょうど、人の波を一本の杭が分かつように、中心近くに突っ立っていた。
 
 頭が働くまで数秒のタイムラグが生じた。いや、本当に数秒だったのだろうか。おそらくは、数分の間動かずにいたのだろう。しかし、ほんの数秒のように感じたのは事実である。そしてその後、首を回して周囲を観察した。
 
 一瞬目を疑った。これは夢なのだろうか。いや、自問するのも馬鹿らしい。夢に決まっている。こんな現実は、神や仏が許しても僕が許さない。企画書の時点で廃案にしてやる。
 
 そこは、駅だった。何故駅だと分かったのか。簡単な話である。白い看板にこう書いてあったからである。
 
「かしわ」
 
 ご丁寧に、上りと下りの駅名も書いてあった。うん、駅だ。
 
 そう言われれば、人が多い理由も理解できる。柏駅周辺は、そこそこ栄えている方だと思うので、これだけ混みあっているというのは、ある意味自然である。逆に、人がほとんどいないという事態の方が驚きである。それに、よく考えればこの駅は僕の家の最寄り駅でもある。気づかないうちに、ここへと足を運んでいても、別段おかしい話ではない。
 
 では何故、モノクロの写真を撮ったかの様に、全ての色が失われているのか。
 
 人々が着ていたであろうカラフルな服は色を無くし、駅のホームからかすかに見える空は暗く澱んでいた。白と灰色と黒。この三色が互いに重なりあい、混じり合って、風景を構築していた。
 
 さらに恐ろしい事に、こうして立っている間に、一言も話し声が聞こえないのである。まさか、色だけでなく音もこの世界には存在しないのだろうか。
 
 例えるなら、全てが死滅した後の世界とでも言おうか。生気などという暖かいものは、どこからも感じられない。色や音が存在しないというだけで、ここまで変わるものなのだろうか。そう思うと、歩く人々が魂を抜かれた死体の群れにも見えてきた。
 
 僕は、思わず一歩下がった。ザッという音が足下でする。どうやら音はあったようだ。しかし、僕はそんな安堵感を微塵も感じることができなかった。頭の片隅では本能が危険信号を発していた。今すぐこの場を離れろ。あらゆる手段を用いて身の安全を確保しろ。
 
 しかし、前方だけでなく、左右も後ろも死人もどきが徘徊している。考えてみれば、駅のホームである。逃げたくとも階段を駆け上らなければならない。つまり、あの灰色の肉塊の間を突破しなくてはならない、ということである。そう思うと、さぁっと血の気が引くのが分かった。自殺行為。僕はその場にかがみ込み、頭を抱え、思わず叫びそうになった。もしかしたら叫んだのかも知れないが、あまりにも混乱していたために、僕には何も聞こえなかった。
 
「落ち着け」
 
 だから、その無機質な声がしたとき、初めは自分の妄想かと思った。ここには、自分と灰色の肉塊達しかいないのだ。
 
 しかし、よくよく考えてみれば、僕が見ているのはこのホームの中だけであって、階段を上った先には元の日常が広がっている、という可能性もある。きっと、この異常に気がついた人が助けに来てくれたのだ。
 
 僕は顔を上げた。しかし、その表情が自分でも自覚できるほど歪むのに、そう長くはかからなかった。
 
 そこに立っていたのは、少女だった。見た目から推するに、年齢は十二、三歳だろう。肩まで伸ばした黒髪を、これまた黒いヘアゴムで一つにまとめている。表情は僕にはわからないかった。それは、少女が無表情だからという訳ではなく、黒いサングラスが顔の半分を覆い隠しているからである。
 
 何よりも奇妙であったのは、その服装である。それは闇色の着物であった。黒では無く闇色。完全なる無の色である。実際、僕の目には、少女の身体はそこにあって、無いかのように曖昧にしか見えなかった。
 
 その奇妙な少女は、僕がしゃがみ込んでいる方へと歩みを進める。彼女の履いている下駄が、カツッ、カツッと音を立てる。その音は、暗いホームに反響し、鼓膜へと突き刺さる。一歩、また一歩と近づいて来るにつれ、少女の姿は鮮明になっていく。いや、鮮明という言い方は正しくはないかもしれない。少女がそこに存在していることに馴れていった、と言った方が的を射ているだろう。なにしろその姿からは、体温だとか感情だとか、おおよそ人間らしさというものが全く感じられないのである。
 
 僕は思わず奥歯を噛みしめた。今度の来訪者は、異常を通り越している。灰色の肉塊なんかよりも遙かにだ。それを比べることすらおこがましい。どうしてそのように思ったのか自分でも分からないが、関わるとやばい存在であることは感じられた。
 
 気がつくと、周りを囲んでいた死人もどきは、塵一つ残さず姿を消していた。まるで幻を見せられていたかのようである。だが、こちらもいつの間にか眼前まで迫っていた少女が、幻で無かったことを物語っていた。
 
 少女がおもむろに口を開く。
 
「少しは落ち着いたか、馬鹿者」
 
 先ほどの声と同じく、起伏も何もない声である。僕は、年下らしき少女に馬鹿者扱いされたことに怒るよりも、その機械のような冷たい声に、ビクッと身体を震わせた。少女は、そんな僕をサングラス越しに一瞥すると、何かを探すように周囲を見回した。
 
 「だいぶ歪みが激しいな。おそらく三級から四級の間くらい……。まあ、一般人にはまだ被害の及ぶ段階ではないか」
 
 少女は、顎に手を当て、なにやらブツブツと呟く。数分の間考え込んでいた少女を、僕はじっと見つめていた。
 
 時間が経つにつれ、頭が働くようになってきた。目の前の少女は、可愛い子ではあると思う。だが、それ以上に不可解である。
 
 どうやらこの子は、今の状況を理解しているようだ。もしくは、理解まではしていなくとも、打開策を知っている。それならば、その考えがまとまるまで、待っていた方が妥当であろう。聞きたいことは山ほどあるが、ここは我慢だ。
 
 僕は僕で、そのような事を考えていると、いきなり響いたパチンという音で、唐突に現実へと引き戻された。どうやら、少女が指を鳴らしたようである。こちらを向いて、さもそれが当然であるかのように言い放つ。
 
 「とりあえず、御前が死ねば万事解決。」
 
 僕は唖然とした。この少女は何を言っているのか。冗談は止めてもらいたい。ただでさえ、理解できない展開に困惑しているのだ。
 
 しかし、少女は続けてこう言った。
 
 「歪みの根元は、特定人物の深層心理内に内包している大罪だ。つまり、その贖罪には死への忠誠を示すことが手っ取り早い。御前にとっては、苦痛から解放されるという特典があるのだ。甘んじて受け入れろ」
 
 どうやら本気のようである。どこから取り出したのか、少女は手にサバイバルナイフを握っていた。
 
 僕は焦りを感じた。いや、待て。それはおかしい。何故、僕が殺されなくてはならないのだ。この現象の原因は僕だと言いたいようだが、僕は気がついたらこの変な世界にいただけで、何にも関係ない。
 
 必死の弁明が通じたのか、少女の動きがふと止まる。そして、ナイフを身体の脇に降ろすと、
 
 「ふむ。確かに死を与える必要は無いかもしれん」
 
 首を少し引き、同意の仕草を見せる。
 
 「ただ、この世界が御前の引き起こした現象であることに変わりはない」
 
 そして、少女はゆっくりと説明し出した。
 
 「御前は人間の七つの大罪、というのを聞いたことがあるか?これはキリスト教の信仰で、人間の罪を七つに分割したものだ。その大罪だが、普段は心の最下層に巣くい、姿を見せることがない。しかし、何らかの原因で増殖、増大を繰り返し、無意識下に抑えきれなくなると、こうして現実化する。
 
 今回の現象だが、この世界の中で御前だけが他と異なっている事には気づいているな。なら、話は早い。それが、御前が諸悪の根元であることを語っている。なぜなら、同一性から一人だけはずれるということは、まずあり得ないからだ」
 
 なるほど。確かに、そう言われてみればその通りかもしれない。もともと、信じられない様なことばかりだったのである。今さら論理も何もあったものではないが、一応の辻褄は合っている。少女の話はまだ続く。
 
「私の見立てでは、御前の大罪は「怠惰」だろう。先に徘徊していた、色を失い、音を忘れた人々がその象徴だ」
 
 うむ。なかなか哲学的な話だ。僕は、怠惰だったのだろうか。思い返してみるが、そんな覚えはない。それどころか、受験生相応に勉強をし、家事の手伝いもし、たまに部活の後輩に顔を見せに行ったりと、怠惰とは程遠い生活をしていた。
 
 そのことを少女に話すと、軽く鼻で笑われた。
 
「随分と順調な人生を歩んでいるではないか。まさに学生の鏡というやつだな。
 
 だが、この現象が起こる前に、何かきっかけがあったことは事実だ。御前は、無意識のうちに何かを怠った。それが何かを考えろ。頭の隅から隅まで、罪で穢れきったその両手でまさぐれ。他には御前が生き残る道は残されてはいない」
 
 そう言い残すと、少女は少し離れたベンチまで規則的なリズムで歩いていき、スッと座った。
 
 僕は、その場であぐらをかき、少女に言われたことを考えた。どうやら、この変な世界から抜け出すには、僕が自分自身の「怠惰」を見つけるか、さもなくば死ぬしかないらしい。後者は論外として、ではいったい僕は何を怠けたのだろうか。勉強、では無いだろう。つい今さっき、塾から模試の結果が届いた。受けた高校は全て合格ラインを越していた。その成績から、勉強についてはサボってはいないと断定できる。
 
 そういえば、進路について母親と少し話をしたのが、この世界に来る前の一番新しい記憶だ。何を話したか。いったい何を言われたのか……。僕は目を瞑って考えた。
 
 ようやく目を開けたのは、おそらく三十分ほど経った後ではないだろうか。なにしろ、この灰色の世界では時間という概念が無いようで、ホームの黄色い時計は、同じ時刻を指したままであったからだ。
 
 今度は、僕が少女に向かってゆっくりと歩いていった。少女は僕が考えている間、ずっと同じ姿勢のまま座っていたようだ。
 
 「どうやら結論が出たようだな。私は、今日は人を殺さずに済みそうかな。」
 
 相変わらず淡々と、しかしどことなく面白そうに少女が言った。僕は少女の目の前、ちょうど見下ろすような形で立っていた。
 
 そう。答えが出たのだ。いたって簡単な結論が。僕は、サングラスで隠れた少女の目を見て、はっきりと言った。これで、元の世界に戻れるのだ。
 
 「俺は……」
 
 そこから先は覚えていない。
 
 気がつくと、僕は駅のホームに突っ立っていた。周りは喧噪に包まれており、勿論行き交う人々も色鮮やかであった。ベンチには、闇色の着物を着た少女の姿は無く、昼間から缶チューハイを持った、中年の男性が座っているだけであった。
 
 僕は、この経験をずっと心の中にしまい込んでいた。しまい込むというのは、詰まる所誰一人として、その少女の話を僕から聞いた人はいなかったである。言った所で信じてもらえない、というのもあったが、何よりも僕はその出会いを秘密にしたかった。誰かに話すということは、あの異質な世界や彼女との会話が、全て第三者に知られる事になるからである。
それを何故、今こうして話すのか。僕はこう思うのだ。この世界に生きる誰もが、あの「罪を喰らう者」との遭遇の可能性を、内に秘めていると。その様な状況に追いやられた時、自分が生き残るために必要なことはただ一つである。自分自身の罪を自ら把握し、そして認める事である。あの時、もしも自分の中の「怠惰」に気づかなかったなら、僕はその場で殺されていただろう。全ての人類は、その危険と常に隣り合わせなのである。
 
作:細田恒太
 
 
 
 
author: Kouta Hosoda
registration No. 0044
application date: 31 October,2009
published date: 1 November,2009


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