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柏恋(はくれん) - かしわーど・柏ミニ文学賞

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 柏恋(はくれん)(RegNo.0043)


タイトル:「柏恋(はくれん)」
ジャンル:小説

 
 何も無いアパートの部屋に僕は一人、管理会社の人を待っている。僕はカーテンの無くなったアパートの窓ガラスを見つめる。朝の光が柔らかに入り込んで、板張りの床を照らしている。二度と入る事の無い部屋に、彼女がお小遣いを貯めて買ったという、ドクロマークの玄関マットが置かれている。彼女はヴィジュアル系バンドが好きな女の子だった。温かい陽射しに僕はまどろんだ。
 
      ◆
 
「それ取って」
 冬の寒い朝だった。彼女は毛布にくるまっていて、なかなか渡してくれない。僕は別の布団を持ってきて交換してやる。顔中をくしゃくしゃにして彼女が笑う。僕はまだ温かい毛布をベランダの柵にかけた。三階立てのお隣さんの建物が目の前にあって、僕たちの部屋は二階だけれど、小さなベランダに出て見上げないと、冬の空は見えなかった。
 
 僕たちは柏駅から歩いて十五分ほどの小さな1Kのアパートに住んでいた。六畳にも満たないくらいの部屋と、小さなキッチンにお風呂とトイレ。近くには踏切とマツモトキヨシがある、築二十数年のシティハイツシャルム柏はそんなアパートだった。
 エアコンを起動して部屋を暖めてやると、彼女はモゾモゾと起き出してくる。スエットの好きな子だった。
「おはよう、おじさん」
 僕は彼女のそんな朝の挨拶に笑う。倍くらいの年齢の僕はおじさんと呼ばれても否定する気になれない。
 ゆっくりと舞う埃の向こうに、ぼさぼさの長い黒髪の彼女が白いお腹を出して伸びをする姿が見える。
「今日は、帰ってくるのは早いの?」
「いつもどおりだよ」
 彼女は僕の返事を聞くと、ぷいと、横を向いて無表情になる。
「雑誌編集の仕事は忙しいもんね」
「入稿期間だからさ」
 抱えていた記事がまだ出来ていなかった。つまらないエロ雑誌の記事だ。初めての同棲に、本当は毎晩飛んで帰ってきたかったけれど、三十もいくつか過ぎて、誰かを養う事に生き甲斐を見つけた僕は、仕事に打ち込みたかった。
「帰ってくる時はメールしてね」
 彼女は笑顔を見せてくれる。きっと不満なんだろう。それでも、笑ってくれるのは彼女なりの優しさだ。どうやら、彼女は言いたいことを飲み込んでしまう癖があるようだった。
「うん、メールするよ」
 僕は、朝の支度をしてしまうと、そう言って彼女に別れを告げて家を出る。彼女がPCの電源を入れるのが、玄関のドアを閉める時に見えた。
 
――ひと回り以上も年齢の違う僕たちは、インターネットのチャットで出会った。
 
 あれはまだ、彼女に会う前の事だ。
「アタシはどこにも行くところが無いの」
 そんな風に、画面を流れていく文字を見た。
 白い画面に、彼女のハンドルネームとともに文字が流れていく。僕は、グラビア雑誌を作りながら、深夜の帰宅を繰り返していた。深夜に話し相手を見つける事ができるチャットに入り浸る事になったのは自然な流れだったのだろう。
「家に帰ればいいじゃないか」
「家は、アタシが家出してる間に引っ越してしまったから。前の家を見にいったんだけれど、誰も居なかった」
 そんな事があるんだろうか。僕は信じていなかった。それでも、毎晩話すうちに面白い女の子だと思った。
「仕事が入ったから」
 夜ごと話していると、そんな風に彼女は、深夜でもチャットから居なくなる時があった。
 僕は、どこに行くのかと、キーボードから画面に打ち込んでも、仕事としか答えない。一時間足らずで戻ってくる事もあったし、数時間居なかった事も、一日戻って来ない事もあった。白い画面に流れる文字だけでの僕らの関係は、お互いの事を何も知らないまま時折繋がるだけの関係だった。
 
――不完全でスイッチを切ってしまえば途切れてしまう糸。
 
「今日はヤバイ、出られないかもしれない」
 そんな風に彼女が言った。彼女がネットカフェに居て、別のサイトにある出会い系から客を取っていたのを知った。
 家出をしている間に、体を売っていたそうだ。
「今、どこに居る?」
 僕はネットの向こうへ、文字だけで尋ねた。
「仙台のネットカフェ。お金が無いから支払できない」
「今から行く」
 そんな風に言って、僕は、仙台へ車を飛ばした。
 
――初めて見た彼女は小柄な少女だった。
 
「学校は行ってないの」
 雪の高速を彼女を隣に乗せたまま柏へ向かっていた時に、そう聞いた。闇の中を照らす頼りなげなライトの向こうでは、ぼたん雪が降っている。路面は既にかなり積もっていて、轍が出来ていた。
「中退したのか」
「そう」
 彼女はどんな顔をしているんだろう。僕はフロントグラスから目を離す事ができない。ノーマルタイヤで無理矢理仙台まで走り出したはいいが、帰りは関東が大雪だった。
「僕もだ、それから大検を取って、大学へ行ったけれどね」
「大検?」
「今だと高卒認定っていうのかな。高校卒業の資格をもらえるみたいだね」
「そっか。いつも先生に勘違いされて怒られてた」
 彼女の瞳は鳶色で、まるでコンタクトをしているようだった。その目が教師を怯えさせたのかもしれない。見据えられると、射貫かれたような気がした。
「学校にもアタシの居場所はなかった」
 彼女は助手席の窓を少しあけ、ポケットからセブンスターを出す。
「吸っていい?」
 僕は頷く。女の子らしくない煙草だ。
 黒い空から降り続く雪に煙の匂いが混ざる。
 
――目に見えるのに掴もうとすると消えてしまう。僕はそれを閉じ込めるためにアパートを借りた。
 
 彼女は家出娘だった。父親とは赤ん坊の時に死別しており家には、母親と父親違いの二人の妹が居る。彼女が家出をする事になったのは、僕よりも若い、母親の新しい男が同居する事になったからだったようだ。家出娘とエロ本編集者のふたり暮らし。イビツなのはわかっていた。
 
 彼女は僕と昼間に風呂に入るのが好きだった。彼女はひとりだと怖がって入らない。
「頭を洗えよ」
 そんな風に命令口調のくせに、彼女は恥ずかしそうに俯いたまま服を脱ぐ。痩せて小さい彼女の体。
  アパートの小さい風呂場は、僕と彼女がギリギリで一緒に入れるくらいの大きさだった。
 浴槽に半身を浸からせ、彼女は僕に頭を差し出す。僕は、長い髪の毛に優しくシャワーを浴びせ、黒々とした所にシャンプーを付け、手で洗ってやる。いつもは憎まれ口を叩くばかりの彼女が、大人しくしている瞬間だった。
 洗い終わると、二人で浴槽に入って抱きしめてやる。
 
――長方形の浴室の窓から差し込む光で、彼女の白い肌を滑るお湯が、光の珠になる。
 
 僕は忙しかったけれど、お金がなかった。僕たちのデートと言えば、二十年近く前の車でセカンドハンドの店へ連れて行く事くらいしかできなかった。
 「アタシ指輪が欲しい」
 そう言って、アクセサリーのショウケースの前で彼女はしゃがみ込む。中に並んでいる指輪を真剣に見て、手のひらを広げて見比べている。体と同じくらい小さい手。僕が傍にしゃがみ込むと、彼女はすぐに僕の手を引き立たせた。ちらりと見た値札には数万円の価格が書かれていた。
「お菓子が食べたいな」
 彼女は高いものを要求しなかった。欲しい物が高いと、いつもお菓子の話をする。セブンスターとお菓子だけ。僕は彼女が本当に欲しいものを、買ってやる事ができない自分を僕は悲しく思った。
「アタシ、スカイラインが好きだけど、この車も好き」
 そんな時、車好きの彼女はそう言って、僕の運転するマークツーの助手席で駄菓子を食べる。
 食事が不規則で、あまり食べなかったのは、彼女なりの僕の給料への気遣いだったのだろうか。働いて欲しかったけれど、彼女には身分証明書が無かった。足りない彼女の服は、ゴミ捨て場から捨てられた服を拾って来た。まだまだ着れる服が捨てられている事に驚いた。
 
 かつての僕は高校を中退した。学校に馴染めなかった。大学に進学しても居場所はなかった。バイトを転々として、無軌道に生きてきた。小さな出版社に入社したけれど、そこでも違和感ばかりだった。
 
「学校に行きたくないか?」
 僕は彼女にそう聞いた。元々柏に住んでいた僕が、シャルム柏にふたりの家を決めたのは、傍に定時制があったからだ。東葛飾高校の校舎が歩いてすぐの所にあった。
「いいの」
 彼女は三千円で買ってきたブラウン管のテレビでゲームをやっている。ヒゲの男がキノコの国を救う話だ。
「高校卒業して欲しいんだ」
「なんで」
「中卒だと人生大変だよ」
「いいの」
 そう言って彼女はコントローラーに集中し、画面の中のヒゲの男がボスを倒していく。
 僕は深夜の街を回り、少しだけズレてしまった若者を見つけて回る、夜回り先生の気分だった。何かを彼女に教えたかった。かつての自分を思い出した。
 中卒で生きていく自信が無く。僕は大学へ進学したのだった。
 
 彼女の身分証明書を取ろうとした事がある。その頃には連絡をつける事ができていた彼女の親にも協力してもらい、転居届けを手に入れていた。
「原付の免許を取ればいいんだよ。写真付きの身分証明書をとれればバイトも出来る」
「ふーんそうなんだ」
 彼女はそれほど乗り気ではなさそうな顔だったが、僕の提案を受け入れた。
 問題集を一緒にやった。ふたりで競争した。
 彼女は正座して二千円で買った古い机に広げたノートに一生懸命答えを書く。合格には全然足りない正答率だったけれど、ふたりでする答え合わせは楽しかった。
 僕は幸せだった。
 僕が家に帰って勉強する日が数日続いたが、それはすぐに終わりを告げた。仕事が忙しくて、一緒に問題を解くのを止めた、その日から彼女は問題集を開くのを止めてしまった。
  
――彼女は幸せだったんだろうか。
 


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